Ruka170cm98F の 知恵ノート

医学部 再受験 理学療法士 などについての知恵ノート集

【03】医学部から研修医まで…どのような過程を経るのか(高校生向けに書きました)その3

医学部から研修医まで その3
 
➇医師国家試験
⑨初期研修
⑩後期研修(専門医研修)
 
注意
  • =免責=
  • 情報の信憑性には万全を期しておりますが、それを保障するものではありません。
  • 2013年12月のデータを基に、適宜編集します。最終更新2019/05。
 

 

 

⑧ 医師国家試験

 
例年2月上旬、卒業直前に行われます。マークシート方式です。
合格率は例年90%前後です。

2009年~2017年の合格基準は以下の通りです。年度により合格ラインが異なりますが、ここではまとめて表記しています。
・必修問題 得点率80.0%以上
・一般問題 正答率61.5~67.0%以上
・臨床問題 正答率61.3~71.2%以上
禁忌肢選択数2~3問以下であること
以上を全て満たした場合に合格となります。
2018年からは少し変わり、一般問題と臨床問題を合わせた合格基準が算出されます。
 
医学部 国家試験の出題問題.jpg
必修問題は絶対基準であり、80%未満は即不合格です
 
禁忌肢問題は地雷問題と言われ、禁忌肢を指定数以上選ぶと他の問題でどんなに正解していても不合格になるものです。ただ、厚労省によりますと、実際にはこれのみで落ちる学生はほとんどいないようです。
 
あまり知られてないことですが、一般問題臨床問題の合格基準は平均点と標準偏差を用いた相対基準を用いて設定されています。定められた正答率%が合格ラインではありません。
相対基準の具体的なカットオフ値(偏差値)は公表されていません。ただ、この値は毎年変わるようで、変えることで合格者数を微調整していますが、一般・臨床が下位およそ7%(筆者推定)以下の受験者は必ず不合格となるような競争試験になっているのです。必修問題とトータルで10%程度が不合格となるような相対基準で最低ラインが引かれるようです。
【医師国家試験改善検討部会 3.(2)合格基準について】

合格率が9割なので、医師国家試験は簡単…と言う人が時々います。しかし、それだけで簡単か否かを論じるのは短絡的です。
必ず約1割が落ちる競争試験ですから、受験者全体のレベルが上昇すれば合否ラインも自動的に上昇しますので、全員が満点など同点を取らない限り全員が合格することはあり得ないのです。
相対基準とはそういうものですから。
 
実際に医師免許を取得した人は簡単だったと言いがちなものですが、第三者が簡単だと言い放つのは少々乱暴で無責任です。
 
*医師国家試験のシステムのさらに詳しい解説は以下の②参照
 
*実際の医師国家試験の問題例については以下を参照
 
*国家試験問題集の例(右端のCBTは別)知恵ノート:医学部国試問題集.JPG
多くの医学生は、受験対策としてこれらの問題集を何周かします。
大学入試の受験勉強と同じですね。
医師国家試験対策予備校のネット講座を利用する人も非常に多いです。
 
 

⑨ 初期研修

 
で述べたような医学生に対して病院等で行われるものは臨床実習(→実習)といいますが、研修医に対して行われるものは臨床研修(→研修)といいます。やや紛らわしいですが、医学生は実習、研修医は研修です。
写真 (2).JPG
大学医学部を卒業し、医師国家試験に合格して免許登録をすると医師免許が得られます。この時点で医師なのですが、その後2年間の卒後臨床研修初期研修を受けなければなりません臨床研修を受けるためには研修先の医療機関を決めなければなりませんが、これは医師臨床研修マッチングというシステムによって行われます。
マッチングとは、臨床研修を受けようとする研修希望者と、研修医療機関の研修プログラムとを両者の希望を踏まえて、一定のアルゴリズムに従いコンピュータにより組み合わせを決定するシステムです。
【医師臨床研修マッチング】
 
マッチングは6年生の6~10月にあります。 
写真(1).JPG
まず、研修希望先病院の就職採用面接を受けた上で、コンピューター上に希望の病院の第1志望、第2志望、…を登録します。そして、病院側も欲しい学生を1位から順に登録します。このような指名投票であり、コンピューターの一定のアルゴリズムに従って研修先が決定されることになります。
 
*病院見学に加えて、その病院が行う面接の他、筆記試験や論文が課されることがあります。
*4年生のCBTの成績を選抜材料として加味されることはあり得ます。
自治医大生や防衛医大生はマッチングに参加しません(行き先が決まっていますから)。
医学部 自治医大生防衛医大生はマッチング不可.jpg
ここで研修を受ける医師は研修医レジデント)と呼ばれます。研修中であっても医師免許を持った医師ですし、研修医も労働者ですから、医療機関から所定の給料が支払われます
 
初期研修中は基本的に指導医の指導のもとで医療行為を行います。
研修医にどんどんやらせる市中病院が多いです。もちろん指導医や上級医に相談したり指導を受けたりしますが、近くに指導医がいるとはいえ早い時期から救急外来患者さんに最初に接触し(ファーストタッチ/ファーストコール)、1人で診察させている病院は珍しくありません。
 
研修医はコマ遣いだ(奴隷だ)…とブログ等に書かれていることがあります。しかし、その意味合いは病院によって全く違いますし、昔と今とでは様相がかなり異なるようです。
そのため、そういった記事を読む際には「いつの時代の話か?」にも注意すべきです。
まあ、やり方、やらせ方は、病院により様々だと思いますが…。
 
わたしは医学生時代に10ヶ所以上の市中病院で研修医の仕事を見学しましたが、積極的に取り組む研修医に対しては必要な手技をどんどんやらせていますし、研修医同士の間で患者さんの取り合いにでもならない限り、診たいと言って診させてもらえないことはまずないです。
いずれにせよ、何ヶ所も見学すれば、様々な病院があることが分かります。大枠はどこへ行ってもだいたい同じですが、細かく見れば全然違います。

近年、大学病院で臨床研修を受ける初期研修医の割合は40%台す。半数以上が市中の臨床研修病院で研修を受けています。
【3.臨床研修病院と大学病院別の状況】
 dr 研修先が大学病院の割合2016.jpg
大学病院ですと高度医療や珍しい疾患に触れるチャンスが多い等、魅力的な面もあります。基本的なことはもちろんひと通り学べますが、やはり狭く深くという面が否めません。また、若い先輩医師が多いゆえに、初期研修医にまであまり患者さんが回って来ないという話も聞きます。
 
内科系でも外科系でもどんな疾患にも合併するものに感染症があります。市中病院ですと、“よくある疾患”(まとめて common disease と言われます)によく遭遇しますが、感染症も言わばコモンディジーのひとつです(とはいえ、感染症にもコモンなもの、レアなもの、いろいろありますが…)。将来、脳外科医になるにしても、外科医、精神科医になるにしても、肺炎のような基本的な感染症が解らないようでは医師として恥ずかしいことです。医師なら誰もが遭遇する疾患を市中病院で多く経験できること…そんなことも、研修医がかつての大学病院一辺倒から市中病院へ流れていることを反映しているものと考えられます。
 
この初期臨床研修は、2004年から必修化(義務化)されています。2年間を各科ローテーションで回ります。プログラムの大枠は以下の通り。
・内科…1年次に6ヶ月以上
・救急科…1年次に3ヶ月以上
・外科…*
・麻酔科…*
産婦人科…*
・小児科…*
・精神科…*
2019年現在では、上記*の5つの診療科の中から2つ以上を選択(選択必修)。
ただし、2020年以降は、外科、産婦人科、小児科、精神科が必修になります。
・地域医療…2年次に1ヶ月以上
・選択科…やりたい科を自分で選択

研修医の研修プログラムの一例.JPG
大枠はこの通りですが、画一的なものではなく詳細は医療機関によって異なります本人のキャリアパスの希望も聞きながらある程度プログラムを柔軟に組んでもらえることが多いです。
初期研修2年間のうち、6~9ヶ月程度は選択ができます。ですから、脳外科をやりたければここで脳外科を選択することは可能です。ただし、2年間で32本の症例レポートを所属病院に提出する必要もあるため、実際には多くの科を選択せざるを得ない状況もあります。
 
研修医が非常に多い病院(大学病院で数十人以上)もあれば、毎年2人程度のところもあります。人数(定員)は病院により全く異なります
 
指導医や上級医と共に行う夜間当直休日日直はあります。回数は週1回=月に4回程度が普通ですが、中には当直が週2回の病院もあります。週1と週2では身体にかかる負担は全然違います。週2は肉体的に相当キツイと思います。
実際、月に10回もの日当直がある病院もわたしが見学した病院にありました。一方で、月に2~3回しかない病院もあります。
 
病院によっては、シフトがギッシリと嵌め込まれていて、あまり選択の自由度がないこともあります。また、研修医が多い病院では他の研修医のプログラムの関係上、やりたいことの融通が利きにくいこともあります。
 
いろいろなパターンがあり得ますから、実際に病院見学や説明会に行って担当者や先輩医師(若い医師がよい)にズバリ聞いてみることをお勧めします。実態はご自身で確かめてみるに限ります
 
いずれにせよ、病院により全く異なるということです。
病院により、暇あらば手技を勉強している研修医がいるかと思えば、疲れきっている研修医もいます。
 
「当院ではあらゆる疾患の患者さんを多く診ることができますから、充実した研修が受けられます」…などと謳う研修病院が多いです。確かに、経験値をできるだけ多くしておくことは大切ですが、多くの患者さんを “サラッと” しか診られないかもしれません。
また、あまりにも忙しく厳し過ぎると、耐えられず研修中断となってしまう例もあります。それは肉体的体力的な話だけではなく、若くて体力のある人でも精神的な理由による研修中断もあるようです。 

医学部 研修中断の理由.jpg

医学部 研修中断者募集.PNG
5年生の夏以降になると病院見学に行く学生が多いです。病院選びの目を養う…という意味で、もっと早い段階で見学し始める人もいます。
国家試験合格者数約9,000人に対し、研修病院の定員は11,000人程度となっていますので、人気病院以外は定員に余裕があることも多いです。
 
なお、高学年になると主として大都市圏で行われる合同病院説明会に参加する機会もあるはずです。こういうところでは病院長や事務担当者のみならず、現役の研修医が説明担当で来ていることが多く、より本音話を聞き易いチャンスでもあります。
ただ、初対面の学生には本音を言わないことも当然あるわけで、見学のお誘いがあれば病院見学をして、改めて話を聞くのがベター。
 
医学生の見学を学年に関係なく随時歓迎している病院も意外と多いです(高学年の5~6年生のみを対象にしている病院もありますが)
 
*某市中病院の病院見学の案内の例
知恵ノート:青洲会の見学案内.JPG
仮に〇〇病院の研修を受けることになったとしても、2年間ずっとその病院だけで研修するわけではなく、科によって周辺の協力病院に行って研修を受ける機会があります。例えば、大学病院で研修を受けるにしても、地域医療を学ぶ時には地域の研修協力病院に出向して研修を受けますし、市中病院で研修を受けることになっても、麻酔科は〇〇大学病院、精神科は△△精神科病院、…といった外部の医療機関で研修を受けることはよくあります。
このように複数の病院が提携を結び、提携先でも研修医が一定期間研修を受けることができるシステムをたすき掛けと呼んでいます。
 
*某大学附属病院の概要から引用
知恵ノート:某大学病院の臨床研修について.JPG
また、下記は市中病院のプログラム例ですが、市中病院に就職して研修を受けることになっても、一部の過程は大学病院その他で研修を受けることも可能になっています。 知恵ノート:市中病院の研修プログラム例.JPG.jpg
たすき掛けで他の病院へ出向中であっても、身分は就職先の病院職員ですから、基本的に給料は貴方の就職先病院から支払われます(例外はあります)。
 
以上のように、大学病院で研修を受けることになっても市中病院への出向はあり得ますし、その逆もあり得ます
 
以下、初期研修医の給料について触れます。
一応「月額30万円以上」という基準が国から示されていますが、これは基準であり規則ではありません。
 
大学病院については全国15の国立大学附属病院を任意に調べたところ、1年目で月給ベースが28万~36万円、ボーナスなしの病院が多く、年収ベースで400万円前後ところがほとんどでした。身分は非正職員が多いです。
*総支給額で諸手当込みです。ただし、住宅手当や通勤手当は別途支給されることはあります。
*各大学附属病院のホームページより独自に集計。
 
調べてみればわかりますが、私立大学医学部付属病院ですと、もう少し安いようです。中には月収30万円には遠く及ばない研修病院もあります。
 
市中病院について調べてみたところ、1年目研修医の平均年収は約546万円でした。身分は9割以上の病院で正職員であり、非正職員は1割未満です。
 
平均年収:546万円標準偏差SD:115万円)
・68%区間(=平均±SD):431万円~661万円
・95区間(=平均±2SD):316万円~776万円
 
以上のように、研修先により年収額にかなりの幅があり、高い病院と安い病院で2倍以上もの差があるのです
ちなみに、一般企業では正社員の大卒初任給で2倍もの差が生じることはまずあり得ません。
 
【注】
*上記95%区間の下限値は計算上316万円ですが、実際にサンプリングしていて市中病院の最低額は大学病院と同等額の360万円でした。
*税込み総支給額で、残業手当、当直手当込み。ボーナス支給がある場合はボーナス込み。
*ただし、この他に住宅手当、通勤手当、扶養手当等が別途支給される病院もあります。
*全国の民間の医療法人、および公立病院から任意に75施設を抽出
年間見込み総支給額が分かるものまたは前年度実績が明示されているもののみ集計しており、単に「月給〇円、ボーナス別途あり」等のような年収額がはっきりしないものは含めていません。
*当方が入手した臨床研修病院資料より独自に集計したものであり、他の類似の調査と結果が大きく異なることがあり得ます。目安程度にお考え下さい。
厚生労働省からは1年目の推計年収450万円というデータが出されていました(調査時)。
*某医師医学生情報サービス会社の調査によると、平均年収は586万円とのことでした。
 
研修2年目以降は多くの病院でもっと多くいただけるようになります。
以下の広告はある市中病院の例です。
知恵ノート:研修医の給料の一例.JPG以下は金額表示が月給ベースですが、高い例と安い例を各々載せておきます。
医学部 給料が高い研修病院.jpg医学部 給料が安い研修病院.jpgこのように、病院により給料は全然違います
もちろん、お金が全てではありません。病院選びでお金というファクターも大切ですが、いずれはもっと稼げるようになるのですから、それ以上に良い研修ができるのか…といった指導体制など中身を問う姿勢は大切です。やはり、臨床研修を通して「できる医師」になれるのかを重視すべきです。指導体制が悪い病院では、放置プレーになっていることも多いという指摘はありますから。
指導体制がしっかりした上で、お金が多いのであれば言うことはありません。
 
なお、給料が高いと何かウラがあるのではないか(ブラック?)…と思われるかもしれませんが、意外にもQOL(クオリティー・オブ・ライフ:生活の質)にはあまり大差がないという声も聞きます。給料額だけではブラック度は何とも言えないようです。
勤務条件等で無理があると最悪の場合は研修中断となりかねませんから、その点のワーク・ライフ・バランスも一応は考えておくべきです。
 
いずれにせよ、事前に情報収集は大切です。
ただ、病院選びでは病院の設備やプログラム、給料等だけに目を採られるべきではありません
重要ですから再度書きますが、指導体制に問題あり…の病院もあります。
世の中にはいろいろなタイプの人がいます。そこの病院の先輩医師たちは後輩医師を熱心に指導するタイプなのか、放ったらかしにするタイプなのか、よく観察すべきです。指導医や上級医がどんな人たちなのか、その病院はどんな風土なのか、人間関係の観点で働き易さは重視すべきです。指導体制の良し悪しは貴方のその後の医師生命を左右しかねないぐらい重要なファクターです。
 
同期入職者はどんな人か…だけは入ってみないと分りませんが、少なくとも先輩方との人間関係…人という要素は慎重に考慮すべきです。
自分に合う/合わない…は必ずありますから。
 
 

⑩ 後期研修(専門医研修)

 
仮に「脳外科医になりたい」のなら、ここからやっと本格的なスタートが始まります。
 
初期研修と違い後期研修は法的な義務はありませんが、専門医研修の制度導入前まで、初期の2年のあと後期研修という枠組みで独自に研修を行っている病院は多数ありました。
研修といっても、病院によりますが、ある3年目の内科系の医師の場合、上級医に相談する機会が毎週1回(ただし必要に応じて随時相談可)と症例検討会の月1回の他はいつも1人で診療していました。医師3年目の途中から外来の枠を持つのは比較的よくあることです。
1人で診療を行っている医師の姿を患者さんから見れば、初期研修が終わってすぐの医師なのか中堅以上の医師なのかは恐らく全く判らないだろうと思います。
 
キャリアアップのため専門医や認定医の資格を取る医師が多いのですが、従来の制度では資格審査および専門医試験に合格して学会等によって認定された医師を専門医と定義していました。
医学部 専門医制度のタイムスケジュール.jpg
【2018年以降】
2018年から専門医の制度が変わりました。まず、今まで各学会ごとにバラバラだった専門医の認定を中立な第三者機関(日本専門医機構)によって行う…と改められました。同機構の理事さんたちは、制度作りで国にはタッチさせないと言っていますが、事実上国が専門医のお墨付きを与える形になり、この制度が軌道に乗った暁には国が制度を牛耳るようになる…と専ら言われています。
 
基本的に、かつての後期研修は制度上、専門医研修に取って代わられることになります。
 
この制度には、医師が提供する医療の質の担保はもちろんですが、その他にも実は、医師の地域偏在の緩和専門医の養成数は地域の実情を総合的に勘案して設定する)という狙いもあります。そのため、〇科の専門医研修は一定の基準を満たした研修病院でのみ可能…という指定のされ方になった上で、都会の病院の〇科の定員は政治的に少なく設定され、〇科を専攻したいなら田舎に行って下さい(つまり、都会では椅子取りゲーム)…となる可能性があります。一部の都県では一部の科について人数制限が既に設けられています。
また、3年目以降の若手医師を再び大学病院に集中させようとする意図も見え隠れします。つまり、大学病院でないと必要な症例数が稼げないから専門医資格が取りにくいですよ…と暗に意図して専攻医注1)を集めようとするものです。
 
注1:専門医研修を受けている医師を専攻医といいます。
 
専門医の資格がなくても法的には医師としてやっていけますし、厚労省の見解では法的な縛りで資格を取らせるのではなく自由意思で資格を取って下さいという考え方です。しかしながら、以下に述べる専門医研修にていずれかの専門医の資格を持っていないと、医師として事実上やっていきづらくなる含みがあります(注2)。これは、高校は義務教育ではないが、皆が高校に進学するので中卒ではやっていけないんじゃないか…という構図と同じです。
また、将来的には、〇科専門医の資格がなければ一部の診療については低い医療点数でしか医療費を算定できない…という制度改正が視野に入っている可能性もあります。ただ、実際に専門医資格と医療点数がリンクされるのはかなり先になると思いますが。
 
注2:一方で、専門医資格取得を意識していない人も最近は多い…という現役医師の意見も多く聞きますし、専門医がなくても普通にやっていけるのではないか…という意見もよく聞きます。
また、例えば精神科ですと、精神保健指定医という精神科医の勤務医の多くが欲しがる資格があります。そういうこともあり、今回導入された精神科専門医の資格を取ってもしょうがないだろう…と考える現役の精神科医も多いです。
 
なお、専門医といっても、いわゆる「スーパードクター」を意味するものではありません。それぞれの領域をしっかり診療する医師が専門医である…という考え方です。
地域で初期対応等の総合的な診療能力を有する医師の専門性を評価して、総合診療専門医を専門医の領域に加えることも、今回の制度改革の目玉になっています。
【専門医制度】
【専門医の在り方に関する検討会 報告書(3.専門医の質の一層の向上について)】
 
専門医研修は、可能であるなら一定期間初期研修と同じ医療機関でもいいし、別の医療機関で勤務しても構いません。しかしながら、プログラム上の理由で、実際には複数の医療機関のローテートになる可能性が高いです。つまり、ひとつの医療機関だけでの勤務ではプログラムを完結せず、複数の病院を渡り歩かなければならないということです。
 
専門医研修では、初期研修を終えた3年目の医師は、以下の19の基本領域からひとつを選択します。
内科専門医
小児科専門医
皮膚科専門医
精神科専門医
外科専門医
整形外科専門医
産婦人科専門医
眼科専門医
耳鼻咽喉科専門医
泌尿器科専門医
脳神経外科専門医
放射線科専門医
麻酔科専門医
病理専門医
臨床検査専門医
救急科専門医
形成外科専門医
総合診療専門医
 
これらの基本領域専門医の研修コース(多くの科で3年、放射線科4年、皮膚科5年など)を通して、レポート提出や試験を経て、パスすると基本領域専門医の資格を持つことになります。
その後は基本領域の資格を更新(恐らく5年毎)しながら、個々の専門性や必要に応じてサブスペシャリティー領域の専門医の資格(消化器、呼吸器、循環器など計29の領域:若干の変更の可能性あり)を取得する…という流れになる予定です。
基本領域プラス、サブスペシャリティー領域という2階建て方式の資格制度というわけです。ただし、サブスペシャリティーが設けられていない科もあります。
写真(2).JPG
 
つまり、医学部卒業後の流れをまとめますと、初期研修2年→基本領域の専門医研修3~5年→サブスペシャリティー領域の専門医研修…となります。
研修といっても、医療行為や関連業務を1人で行い、必要に応じて上級医などからアドバイスを受けるのが普通のスタイルです。
 
研修が終わり、研修医とか専攻医などと呼ばれなくなっても、医学の勉強に終わりはありません。また、今度は自分が後輩医師に教える立場になりますが、教えることも勉強だといえます。1年目の医師をその上の医師が指導する、その医師をさらに上の医師が指導する…といった先輩が後輩を教える現場教育もされており、これは屋根瓦方式と呼ばれています。
 
 
以上、医学部から研修医までの流れと、個々のプロセスについてのある程度のイメージ作りのご参考となれば幸いです。
 
 
「医学部から研修医まで…どのような過程を経るのか」 完
 
 
 
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