Ruka170cm98F の 知恵ノート

医学部 再受験 理学療法士 などについての知恵ノート集

【16】理学療法士養成校 第④編:国家試験合格率のカラクリ編

 
国家試験合格率のカラクリ編
 
 
=国家試験合格率のマジックとは=
 
理学療法士(PT)業界関係者なら誰もが知っている話題を具体的に書きます。
 
   国家試験合格率100%!   就職率100%!
 
学校はこれを言いたいのです。数字で評価されるとしたら分かり易い指標になるからです。
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中には正直に70%台の合格率を明示している学校もあります。
合格率の全国平均が80%以上ですから、本当はこうは書きにくい。
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他の学科の合格率を100%と書きたかったから、理学療法士(PT)だけ意図的に数字を隠すことができなかったのだろうと思います。
 
それはさておき、何人受けて何人受かったかの分母分子(実際の数)がわからないと、この合格率という数字はほとんど参考にできません。よく言われる数字のマジックですが、40人受けて20人合格すれば合格率は50%20人受けて20人合格なら100%です。ならば、受かりそうもない下位20人の学生を最初から受験させず、分母を小さくしておけば、合格率という数字を大きく見せることができるわけです。
 
成績不良者の留年は当然だとしても、成績がギリギリの者にも国家試験を受けさせず、最終学年で極端に多くの学生を留年させて合格率を稼いでいる学校の噂はよく流れますし、わたしがオープンキャンパス(以下OC)に行った学校の先生方は、こんなことやって数字を誤魔化している学校はいっぱいありますよ
…とほぼ必ず指摘していました。
 
下の表は2014年の国家試験の養成校別合格者状況(パソコン版)。
 
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出願者数と受験者数に著しいかい離がみられる学校もあります。
 
一番下の学校ですが、87人が出願したものの、実際に受験したのは44人です。
つまり、1月上旬の願書締切後に出願者のほぼ半数(43人)が受験を取り止めたことになります。その考えられる理由としては、学校の卒業試験に不合格になり卒業見込みとならずに留年になった…ということでしょう(これはひどい)。
 
しかし、このように出願者の半数もの学生が国試を受けられない状態になっていたことは極めて異常事態です。
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下表の数字を消してない6校についてはいずれも入学定員40人の学校です。
ところが、学校によっては定員の半分しか受験していません。定員の半数が留年または中退したか、あるいは、元々入学時から定員割れだったのでしょうか。
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最終学年で留年した人の多くは卒業できない成績しか取れていなかったというのも恐らく事実だとは思いますが、いずれにせよ入学定員数と卒業者数に大きなかい離がある学校(中退や留年する人が多い学校)は何らかの問題があるに違いありません。学力もなくやる気もなく中退する学生が1割程度いるのは止むを得ないかもしれませんし、2~3割いる学校もわたしがOCで訪ねた学校の中にいくつかあったようです。
ただ、卒業すらできない人が半数にも達するとなると、最初から余程レベルの低い学生しか集まってないか、教育がダメなのか…だろうと思います。
 
【養成校別合格者状況(パソコン版)】
 
貴方がしっかり勉強して資格が取れさえすれば、他の学生のことなんか関係ないかもしれませんが、貴方のモチベーションに悪影響を及ぼすかもしれません。
一応、注意が必要です。
 
下表のようにホームページ上で実際の数を示しているならまだ良心的な方ですが、自らのホームページ上に受験者が何人いたかの数字を挙げている学校はあまりありません。
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結局、何人が入学して、何人が国家試験の出願をして、何人が受験して、何人が合格したか…こういった細かい数字がそろって初めて、学校の実力が正当に評価できるものです。
極端に言えば、1人受けて1人受かれば100%です
同じ100%でも、実態は学校により全く異なります。だから、国家試験合格率の数字だけを鵜呑みにしないことは大切です。
学校によっては中退や留年が非常に多く、国試に受かりそうな学生だけ受けさせて率を稼ぐ学校があります。こういったことは蔓延していますから。
 
 
=就職率100%について=
 
就職率とは「就職したいと思っている人」のうちの何%が「就職できたか」を表します。
 
就職率%={(就職できた人の数)/(就職したいと思っている人の数)}×100
 
注意点は「就職したいと思っていない人」は分母に含まれない…ということです。
希望しないところへ就職した場合は「就職者」(=分子)になりますから、就職率の数に反映されます。
就職する気があって、それなりの活動をするなら100%はむしろ当然の数字です。
現状では就職率100%は達成して当たり前であって、特に自慢になる数字ではありません。実際、どこの養成校でもほとんどが100%です。
多額の学費をつぎ込んでいるのに就職できなかったら困ります。ただ、大学を出ても就職できない人がいる時代ですから、こういった数字が目を引くのかもしれません。
 
なお、国家試験は例年3月1日頃に行われますから、順序として普通は就職先が決まってから国家試験を受験することになります。そして、もし国家試験に落ちてしまうと、せっかくの就職内定が取り消されるケースがほとんどなのが実情です。つまり、{国試に落ちた⇒就職できず}…ということです。
では、このようなケースで就職できなかった人の数は、就職率という数字に反映されているのでしょうか?
 
以下の写真はある学校のコメントです。
これを見ますと、この学校の国試合格率は100%ではないので、国試に落ちた人が存在しています。しかしながら、就職率は100%と謳っています。
つまり、ここから国家試験に落ちて就職できなかった人の数は就職率に反映されていないことが解ります。すなわち、就職率の計算式の分母から、国試不合格者数が除外されている…ということです。
国試に落ちた卒業生は就職できませんから、本来なら就職率100%という書き方はおかしいと思いますが…。あくまでも国試に受かった人は100%就職していますと言っているだけで、実際には就職できてない人がいるわけですから、そのことをここで指摘しておきます。
pt 国試合格率と就職率.jpg
なお、就職先の種別(病院、介護老人保健施設などの施設の別)については、関連別ノート 理学療法士になるにあたっての知恵ノート⑤就職先はどうなっているのか(統計) をご参照下さい。
 
 
=最後に=
 
質の悪い学校は存在します。しかしながら、学校だけにその責任があるわけではなく、安易に入学してくる学生側にも責任があると思います。学力が低くても入学できてしまうAO入試は、貴方のやる気を評価しますという建前の入試のはずが、面接や作文で表現する貴方のやる気などどうにでも取り繕える抜け道的なシステムになってしまっていることに大きな問題があると思っています。
 
でも書きましたが繰り返します。
特に、養成校のほとんどを占める私立大学や私立専門学校は多額の投資になるので、まず第一に、安易な気持ちで進学しないように…と言いたいです。
第二に、学校選びはポリシーを持ってしっかりと行うことが大切です。
 
PTという仕事は高い投資に対して必ずしも高い報酬があるわけではありませんので、やはりPTになりたいという熱意がないと進学してから後悔します。特に、PTになりたかったわけでもないのに周囲にそそのかされて?養成校に入ってしまい、高学年になってくじけてしまって中退してしまうようでは大変不幸です。
 
成績不良で留年したり中退したりする人の多くは、勉強についていけない人というよりは、勉強しない人です。高校時代に勉強する習慣のなかった人は、入学してから非常に苦労するだろうと思います。
 
留年すれば当然1年分の学費が余分にかかってしまいます。余分な学費と時間をかけてまで卒業しようとする気がなくなってしまい、留年をキッカケに退学する人が多く、学校によってはこの率が3割を超えます。
 
PTになることを考えるのなら、自分自身の責任でPTの仕事内容をはじめとして調べは入念に行っておくべきです。
貴方自身、もう一度これでいいのか、心づもりを再確認しましょう。
 
 
国家試験合格率のカラクリ編 終わり
 
 
 
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