Ruka170cm98F の 知恵ノート

医学部 再受験 理学療法士 などについての知恵ノート集

【14】理学療法士養成校 第②編:本編

理学療法士養成校(入学前までの話) 

 
 
前編 理学療法士養成校 オープンキャンパス編 ではオープンキャンパスOC )について書きましたが、本稿 第②編:本編 ではOC に参加した体験もベースにもう少し冷めた目で養成校について記述していきたいと思います。
pt 骨模型のベストアングル.JPG
 
 
=カリキュラムについて=
 
履修科目の例は下記をご参照下さい。
わたしの出身校(国立3年制専門学校)の場合。15年以上前のパンフレットから転載したものです。学校により多少の違いはあるかと思いますが、基本的にこんな感じです。  
pt 国立専門学校カリキュラム.JPEG
・解剖学生理学運動学などの重要な専門基礎科目
脳神経外科神経内科整形外科学などのリハビリに関連の深い科目(これらは作業療法学科でも履修します)や理学療法学科の専門科目
・評価学臨床実習などPTが現場で必要となる知識や手技
・この他、英語心理学社会学などの教養科目
を学びます。いわゆる座学(教室で学ぶ講義)は3年制の学校の場合、2年生の年明けまで、または冬頃までに終了します。その後は臨床実習(評価実習+長期実習)を受けます。
 
大学では一般教養科目が専門学校よりも多い傾向にあります。また、大学では動物(カエル等)を使った神経生理学的な実験をはじめ、実験はそれなりに多いと思いますが、専門学校では少ないか全くないと思います。
学校によっては、大学医学部の人体解剖実習の見学ができることもあります。
 
写真はわたしが使っていた教科書。現在はもっと新しい版が出ています。
本1.JPGpt 本.jpg
 
臨床実習
・長期実習…6~9週間×2回のパターンが多い
・評価実習(または短期実習と呼ぶこともあります)…2~4週間
があります。
 
1~2年次に病院・老健等の見学・体験実習や数日間の評価実習もあり、広義ではこれも臨床実習なのかもしれませんが、本稿では臨床実習とは長期実習と評価実習を指すものとします。
 
臨床実習の期間は合計で18週以上と定められているようです(注1)が、実際には18~22週の学校が多いようです。
 
注1:厳密には、これを満たしていない学校もあると聞いています。
 
実習地は近隣の病院になることもあれば、遠方の病院になることもあります。各学校が病院とコネがあるかどうかによります。学校によっては、長期実習ではなるべく近隣で、または各学生の実家から近い病院で行えるようにと配慮していることもあります。
 
臨床実習の概要は 第③編:臨床実習編 で説明しています。重複しますが、最近は学生の数が多く、実習先病院ではあまり多くの学生さんを受け入れるだけの余裕がなく、実習期間が短縮傾向にあると思います。
 
 
=4年制と3年制の違い(専門学校)=
 
別ノート 理学療法士になるにあたっての知恵ノート でも触れましたが、少し詳しく記載します。
 
・コアカリキュラム
4年制も3年制も現実的にはほとんど同じだと考えて構いません。
4年制では建前上3,400時間以上の履修が必要とされ、若干多い傾向はあるようですが、専門科目や実習が必ずしも長いとは限りません。例えば、ある3年制の学校では9週の長期実習を2回やりますが、ある4年制の学校では6週を2回しかやらないなど、必ずしも年限と履修時間が比例関係ではないことを指摘しておきます。
 
・メリットデメリット
4年制の学校、3年制の学校は各々4年制、3年制が良いと主張します。それらが主張するポイントはほとんど例外なく以下に集約されます
 
【4年制】
*メリットとして謳われている点
高度専門士の称号が与えられる
・公務員系病院では大卒と同等の給料水準になっている
・大学院へ進学できる資格が与えられる
・年限が長いため、時間的余裕がある
*デメリット
・1年分の学費(120万~170万円)が余分にかかるのは明らか
・卒業まで1年余分にかかる
・民間病院では3年制と給料の差を付けていないことが多く、給料面での優位性がない
4年制がいいとする意見まとめ.PNG
pt 4年制がいいとする意見③.jpg
 
【3年制】
*メリットとして謳われている点
・4年制よりも1年早くキャリアをスタートできる。特に社会人がPTの資格を取ろうとする場合の1年の差は大きい
・1年早く就職して収入を得ることができ、1年分の学費を節約できるので、経済的に有利
・年限は短くても実習期間等は4年制並みに取られている
*デメリット
・カリキュラムがやや詰め詰めであること
3年制をよしとする意見のまとめ.PNG
pt 3年生がいいとする意見③.jpg
 
高度専門士について
2005年に文科省によりこの称号が創設され(注2)、基本的に4年制専門学校卒業者に与えられます。そして、高度専門士は学士(=大卒)と同等に扱われるものとしました。
 
注2:高度専門士称号であって、学歴上は “専門学校卒(専修学校卒)” です。
 
文科省=国がこれを設置したのですから、公務員系の病院に勤める場合、給料は学士=大卒と同等の扱いをする建前になります。下記は某3県の国立病院機構の求人例です。
pt 大卒と専門卒の初任給の比較.PNG.jpg
公務員系の病院注3)では大卒(学士)は専門学校卒(専門士)よりも高い給料が与えられますが、4年制専門卒の高度専門士については大卒と同等になります。いくつか任意に調べてみたところ、専門士との差は月額6,000~14,000円程度のようでした。
ただし、公務員系病院の初任給は民間病院の初任給(月給20万~23万円ぐらいが中央値)の水準に比べると安いです。
 
注3:ここでは給料の話を述べていますが、そもそも公務員系の病院への就職は、その前提として、かなり狭き門であることにも留意して下さい。なかなか簡単には入れません。
 
一方で、民間病院の場合学歴や称号により給料に差を付けるかどうかはその病院が独自に判断することになります。現実的には{大卒、4年制専門卒、3年制専門卒}で給料に差を付けていない病院がほとんどです(注4)。わたしがかつて勤務していた民間病院でも、給料に差はありませんでした。
 
注4:ただし、この傾向は今後どう変化していくかはわかりません。
 
今回このノートを書くにあたり、民間病院で差をつけている病院がないか学校宛の求人票で探してみました。その結果、わたしが探した限り、
4年制が205,700円、
3年制が193,500円、
12,200円の差を付けていた病院がひとつ、そして、全国展開しているT州会グループで1,500円の差を付けていることを見つけましたが、この他の民間病院では発見できませんでした。
 
高度専門士のメリットとして大学院入学資格が与えられる…があります。大学院に進学するのならこの点では専門士よりも門戸が広いと言えます。
ただ、PTとして2年以上の実務経験があり、学会等での研究発表の実績もあって、大学院側の先生が了解すれば大学院の受験資格が得られる…という話を経験者から聞いています。また、3年制卒のPTが通信制課程で学士を取得して大学院に進学した例もありますが、これなら全く問題なしです。
大学院進学については、本人がその気になれば特別高いハードルではないでしょう。取り立ててメリットデメリットで語る話でもないと感じます。そもそも、4年制専門から大学院へ進学する例は、個人的にもほとんど聞いたことありませんし…。
 
・そもそも、PTの専門学校になぜ4年制と3年制があるのか?
どうやらPT協会自体がPT養成を大学化したいという考えが以前からあったようです。米国ではPTは大学院レベルであり、社会的地位も高く、年収も高い(日本の約2倍)です。そういったことを見習ってレベルアップを図るなら、専門学校よりは大学を、3年制よりは4年制を…という発想になるのでしょう。
看護師の世界でも、これからは大卒ナースだ…と言う人も医療界にはかなり多くいます。
薬剤師になるためには専門学校ではなく大学(薬学部)進学が必須ですが、その養成コースは昔の4年制が現在では6年制になっています(医師や歯科医師に肩を並べたい?のでしょうか?)。
そういった背景もあり、PTは3年間でいいのか?…と主張する人もいると思います。
 
PT養成校は元々3年制専門学校しかありませんでしたが、その後、大学で養成課程が設置され、専門学校の一部は4年制になりました。
そんなわけで、現在も4年制と3年制が混在した状態になっています。
 
・では、4年制教育の真価はどうなのか?
本来ならば、3年制よりも1年長いのですから、1年分高度な教育が行われていてしかるべきです。ですが、実態は??です。
誤解を恐れずに言いますと、3年間でできることをビヨーンと引っ張って4年に広げただけ(注5)…休講(空きコマ)が多い、臨床実習期間は大して変わらない、その上に授業料はまるまる1年分が余分にかかってしまう…等と、わたしは専門学校のプラス1年間に付加価値を見出すことができません。
 
注5:実習が1日8時間で週5日間、20週間あるとし、授業は1日6時間で週5日間、年40週間として試算してみると、4年制で最低限必要とされる3,400時間は約2.7年に相当します。つまり、現行の4年制のカリキュラムは3年間に押し込むことが十分に可能な分量である…ということです。
わたしの出身校の3年制で、それを上回る3,500時間以上ありましたから。
 
実際のところ、高度専門士の社会的な評価や価値の高さ、大卒学士と同等なのか…についても、個人的にはかなり疑問視しております。
これを言い出すと、そもそも文科省高度専門士を創設した時の背景にも言及すべきかもしれませんが、ここではそちらへの深入りは止めておきます。
 
こんな専門学校(当時4年制)もあります。
pt 4年制から3年制に.jpg
この他にも以前は4年制だったのを既に3年制に改めた専門学校が複数存在しています。 
pt 4年制から3年制へ.jpg
いずれも、4年制から3年制になっても実習時間等は削減していないと謳っていました。
このように、3年制に改変した理由は、現状のカリキュラムを3年間に押し込めることが可能であることと、4年制は学費が高いため学生がなかなか集まらない…のだろうと推測します。
 
カリキュラム的には4年制では4年の夏に長期臨床実習が終わり、それ以降は国家試験の勉強を開始できますが、3年制だと長期実習が遅いと3年の10月末頃までかかり、国試勉強に専念できる時間がやや短くなります。
4年制専門学校の3年生から聞いた話ですが、3年次の授業のコマはびっしりと埋まっておらず、半日休講などの休みもよくあるとのことです。1年間余分にあれば学生の視点では楽ですが、中身が薄ければ時間とお金の無駄になりかねません。
また、臨床実習編 でも述べていますが、在学期間が長いからといって実習等も長いという比例関係は特に見られません。既に述べましたが、臨床実習の期間はどこの学校でもトータル18~22週ぐらいです。
 
以上をまとめますと、3年制は時間的にはややキツイ面はあっても経済的に有利な点が最大のメリットです。実際に受験する人たちの多くは学費を意識していて、3年制の方に学生が集まる傾向があるようです。
ただし、3年制でも留年して4年間通ったら元も子もありませんから、留年しないように気をつける必要はあります。
 
 
=大学と専門学校との違い=
 
大学教育は問題解決へのアプローチを科学的な視点で考える能力を養おうとする意識がより高いと感じます。その一方で、PTとは直接関係のない科目も多く履修し、幅広い視野も大切にしていると感じます。
そもそも、大学は基本的に自主的に勉強をする場です。
 
これに対し、専門学校では資格を取るための必要な学習はしますが、必要最低限の部分に集中するわけで、職業訓練校の毛色が強いのが一般的です。
 
大学(特に国公立大学)は研究色が強く、専門学校は実践的だと考える人もいます。ある程度はそうかもしれません。ですが、専門学校が専門的というわけでもないですし、大卒者も臨床のPTになるよう教育を受けるわけですから、必ずしもそこまでスパッと分けられる程でもありません。
また、専門学校でも研究分野に明るい先生がいることもあるため、あまりキッチリと分けた言い方をするのは必ずしも正しくないかもしれません。
 
ただ、入試学力があるなら大学へ進学するのが良いとわたしは思います。大卒という学歴や社会的な評価は一応付いてまわります。確かに、PTになるだけならどこの養成校でも変わりませんが、社会的には専門学校と比べたら格上に見られますし、今後もこの見方は恐らく不変です。PTは今後も増加し続けていきますから、差別化の意味でもなるべく大学進学を勧めます。
そして、もし仮にPT以外の職に就いたとしても、大卒はあくまでも大卒です。専門学校ではPT以外の職に就いてしまえば基本的に高卒と同等扱いです。
単に学歴の問題だけではなく、特に現在高校生の人たちには幅広い視野を養って欲しいとも思います。
 
4年制専門卒の高度専門士が大卒と同等…と謳われていても、現実的には大学と比較したら社会的に見た評価は明らかに大学に軍配が上がります。
3年制専門学校と比較して、4年制専門にはそのプラス1年間の付加価値に乏しいですが、大学にはそれなりの付加価値があります(もっとも、大学でも社会的な評価の低い大学は多々ありますが…)。
 
ただし、矛盾するようですが、PTの現場では現実的には大卒と専門学校卒との違いをひしひしと感じる場面はあまりありません。それは残念なことかもしれませんが、病院内部における評価は大卒だろうが専門卒だろうが基本的に同じPTだからです。同じPTなんだから、大卒だからと余分に給料を出したくない…というのが病院側の本音です。
また、昇進等は民間病院の場合、学歴よりも最終的には “個人の資質”、能力や人望によるものが大きいです。
 
学費的な面で難しい場合や20歳代半ば以上の人には、早く資格が取れる3年制専門学校がいいでしょう。実際のところ、3年制専門学校には元社会人など年齢層が高い人が多く在籍する傾向があります。
 
大学と専門学校との比較で、最後に2014年の国家試験合格率の内訳を挙げておきます。
 
・全体………83.7(9315/11129)
………………新卒…90.2%(8924/9889)、既卒…31.5%(391/1240)
 
・大学卒………90.8(3533/3891)
………………新卒…93.3%(3454/3703)、既卒…42.0%(79/188)
 
・専門学校卒…79.9(5782/7238)
………………新卒…88.4%(5470/6186)、既卒…29.7%(312/1052)
 
新卒と既卒を合わせた比較では、大卒者の方が10%以上高い合格率となっています。
 
 
=入試の難易度はどのぐらいか=
 
ある意味不思議な話なのですが、同じ資格を得る養成校なのに学校のレベルの差が大きいです。入試難易度は国公立の最難関大学でその入試偏差値は60を超えます。一方で、下は40前後からあります。あまりにもレベルの低い学校は貴方のモチベーションに影響しますから避けるべきです。
 
選抜方法が学校により異なるため入試難易度を同一の基準では測れないのですが、大雑把な目安は以下のような感じ(注6)です。
・多くの国公立大学:偏差値56~一部で60~)。
・多くの私立大学:偏差値45~57
・多くの私立専門学校:偏差値40~52
同じPTになる目的で行く学校なのに、かなりの幅があります。
 
出題される一般入試問題(英語、数学など)の難易度は、わたしが見た限り
私立大学の場合、概ね大学入試センター試験並み
私立専門学校の場合、高校1年生なら概ね解けるレベル
という印象を受けます。
 
なるべくレベルの高めの大学に進学することをお勧めしておきます。とは言え、こういった偏差値は2~3の差なら学生の質は大幅には変わらないと思いますが、大学にせよ専門学校にせよ、なるべく真ん中以上のところに行っておくのが無難です。
 
注6:“よい条件の就職” ができる順番も、だいたいこの順になるとお考え下さい。
 
 
=学校選びについて=
 
国公立大学なら研究という面から考えた場合、教育の質も学生の質も設備もひとまず文句なしでしょう。学費も安く、PTの全定員のわずか4%しか枠がありませんからこの業界では難関で、優秀な学生が集まりますが、やや頭が固い…という意見を聞くことはあります。理屈や理論にばかり走り過ぎるきらいがあるのかもしれません。
また、大学で長く教えている教員ほど実際の臨床現場から離れている傾向がありますから、理学療法を科学として教えることは上手でも、臨床現場の事情に疎くなっていることがあります。そういう観点では、十分な臨床経験があるなら教員歴は少々浅くてもあまり影響ないかもしれません。
ちなみに、5年以上の臨床経験があればPTの教員になることができます。
教員によっては週1~2回程度、非常勤のPTとして病院で働いている人もいます。これは大学、専門学校に関わらず言えることですが、良い意味ではそうやって臨床の感覚を失わないように努めている…ということです。
 
私立大学や専門学校でしたら古くからあるいわゆる伝統校をお勧めします。これは、伝統校のほうがノウハウもあり、卒業生も多く、実習先病院とのコネクションが豊富だからです。
ただし、あくまでも一般的な傾向です。大学自体の設立は古いもののPT学科の設置が新しいケースでは、大学の知名度も相まって新設でも比較的安心感はあります。ですが、これはケースバイケースでしょうから慎重な検討が必要です。
 
専門学校の新設校は全くお勧めできません。既に養成校は乱立しています。特に専門学校の場合、2009年の165校をピークに減ってきており(別ノート 理学療法士になるにあたっての知恵ノート の統計を参照)、PT養成から撤退する学校も既に出始めているのが現状です。いろいろな意味で危うい船に乗ることになりますから避けるのが賢明です。
2000年以降に設立された私立専門学校を国立大学と比較してしまえば、相手が悪すぎたと言える程、ポテンシャルに差(注7)があるでしょう。
 
注7:別ノート 理学療法士の今後について の内容にも関連しますが、今後PTの就職事情が悪化する場合、最初に影響が出るのは歴史のない専門学校からです。
 
わたしは、「職場で実習生を受け入れる余裕がありますか?」という問い合わせを専門学校教員の知人から過去3度も受けたことがあります。2000年代半ば以降の規制緩和策でPT養成校が乱立し始めていたこの頃の教員は、このように実習先の確保に奔走していたのです。地域の病院とのコネが少ない新設校だと実習先施設の点で不利になることが多い注8)ので、学校チェックの際はこの点も意識しておいたほうがいいです。
わたしの元勤務先もそうでしたが、毎年のように実習生を受け入れている病院でも、あまりにも学生が多いからと一部の学生については受け入れをお断りすることがありました。
 
注8:例えば、先生の個人的なコネを頼りに実習先がかなり遠方の病院になってしまうこともあります。また、長期実習のうちの1回は(受け入れてくれる病院がなかったため)デイケアセンターでの実習になったケースもあります。
 
また、ある病院でリハビリ科トップを務めている知人は、〇〇専門学校の実習依頼は即断っている…と言っています。過去に〇〇の学生を受け入れたが学生のレベルが低いから…という理由で断ることさえあるのです。これは病院側の視点では至極当然の理屈です。不勉強な学生に実際の患者さんを担当させるわけにはいきませんから。
あまりにも学生のレベルが低いと、実習現場のPTは学校の先生にクレームを付けますし、患者さんが病院に対してクレームを付けることもあります。
 
繰り返しですが、なるべくレベルが高めの伝統校をお勧めしておきます。もちろん学校に質を求めるばかりではなく、貴方自身のレベルアップも必要です。
 
ズバリ言いますが、2000年代にPT養成校が急増した際、PT養成はカネになるビジネスだという理由で参入した学校が潜在的にはかなり多いはずです。そういう学校は教育体制や経営体制に問題があるかもしれません。
業界参入のキッカケは何であれ、金儲け思想の不純な学校を避け、実直に取り組んでいる学校を探して下さい。
 
 
=学校を見る時のポイント=
 
OC に行くなら、最低限先生や学生の身なりや清潔さ、態度をよく見ておきましょう。長い爪ではリハビリはできません。OC というイベントにも関わらず汚いケーシーをだらしなく着ている教員や学生がいるような学校は避けましょう。
また、PTという業界には自分は偉いと勘違いした威張った態度の輩がたまにいます。非常に残念な実情ですが、一応チェックしておいていい項目です。
 
先輩在学生が見学者を案内し、しっかりと学校設備や授業内容を解説できているような学校ならひとまずOK(予選通過レベル)でしょう。
 
設備面ではだいたいどこの学校でも最低限は整えていますから、素人が設備を見て学校の良し悪しを判断するのは難しいと思います。わたしの出身校には大した設備はありませんでしたが、それでもPTになるだけの最低限の設備は一応ありましたから。
ただ、わたしが見た印象では専門学校よりも大学の方が機器にお金がかかっている傾向にあると感じます(注9)。どうせ行くのなら大学を勧める所以です。大学を含めて複数校のOC に参加すると分かり易いかと思います。
 
注9:無論100%そうとは言えませんし、設備があっても十分に使いこなしているかは別問題です。
 
「臨床経験豊富な講師陣…」という謳い文句をホームページやパンフレット等でよく目にします。確かに “経験” なら教員経験よりも臨床経験の方を重視すべきかもしれません。前述の通り、あまりにも教員経験が長いと臨床から離れている期間も長く、科学の視点と臨床の視点にバランス感を欠くだろうと思います。
 
ホームページを見ると、学校によりデザインや主張がさまざまです。書き方がチャラチャラしている学校、実直な学校…、いろいろですが、基本的にはいいことしか書きませんし、よく読むとあまり中身のないことを書いていることもあります。
表面的なネット情報をまともに受けないことですが、早くからPT養成に真剣に取り組んでいたのか、PT養成が流行だから開校したのか…そこを観察して欲しいと思います。
 
結局のところ、難しいことなのですが、実際に訪ねて、そこの空気を感じることが大切です。何となくこの学校は変だ…という勘はだいたい当たります。先輩在学生と直接話をしてみることです。そして、なるべく複数の学校を比較してみることも大切です。
 
就職先実績としては、総合病院リハビリテーション病院等の医療機関へ卒業生を多く輩出している学校はいいと思います。
一方、介護施設福祉施設、△△会社等の、医療機関以外への就職先の割合が高い学校は避けた方が無難です(注10)。つまり、そこの学生は医療系にはなかなか就職できていない…ということですから。これについては、別ノート 理学療法士になるにあたっての知恵ノート⑧就職先について考えるヒント もご参照下さい。
 
注10:新卒者が最初に就職する就職先としては、医療機関(≒病院)を強くお勧めします。
 
ところで、入学金や授業料を高校の成績や親の所得により減免している学校もありますから、そういう情報収集もしておくといいでしょう。
 
なお、質の悪い学校は中退する学生が多いのですが、学生だけではなくトップの教育方針や経営方針に納得できずに辞めていく先生も多いです。
先生の入れ替わりが激しい学校は絶対に避けるべきです
 
 
=最後に=
 
大多数の人が行く私立の養成校への進学は多額の投資になります。そして、専門学校では卒後は事実上PTになるしか進路がありません。
そこで、まず第一に安易な気持ちで進学を決めないようにして下さい。
第二に学校選びは貴方なりにポリシーを持ってしっかり行うことが大切です。
 
成績不良者の多くは「勉強についていけない人」というよりも「勉強しない人」のようです。そして、成績不良で留年が決まると余分な学費が発生し、余分な学費を払ってまでやっていく気がさらに一層なくなった…進路を変えるなら早い方がよい…として退学を決意するパターンの人が非常に多いのです。
これはPT養成校だけではなく、どこの大学や専門学校でも最近はよくある傾向です。
 
現在PT数が多く、就職は一発で決まるとは限りません。採用面接で落ち易い人の傾向としては、学業成績があまり良くないこともひとつですが、コミュニケーション能力に難あり…の例もよく聞きます。
これらの点も併せて留意しておいて下さい。
 
PTという仕事は必ずしも高い報酬が得られるわけではありませんので、PTになりたいという熱意がないといろいろな意味で後悔します
仕事内容をはじめとして、下調べは入念に。
貴方自身、これでいいのか受験前にもう一度心づもりを確認してみましょう。
 
 
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