Ruka170cm98F の 知恵ノート

医学部 再受験 理学療法士 などについての知恵ノート集

【08】医師国家試験について

医師国家試験について

 

 

合格率は約90%

この90%という数字、簡単なのか?難しいのか?

まず、医師国家試験の難易度を現役の医師に質問してはダメです。合格した人が医師をやっているのです。
知恵袋の医師たちなら、簡単だった…と言うに決まってますよ。
 
dr 医師国家試験4.jpg
 
優秀な人なら適当に解いて受かるのかもしれませんが、一般の人は単純にこれを信じてはいけません。
 
一方で、医療とは関係のない一般の人が90%という数字だけを見て簡単だと吐き捨てるのは、これまた大きな見当違いです。

dr 医師国家試験5.jpg一般の人の中にはこういう考えの人がいるんですよね。苦笑。

dr 医師国家試験3.jpgプレッシャーがすごい…というのは当たっています。

dr 医師国家試験2.jpg
受からなかった人が翌年受ける場合(つまり国試浪人ということ)、その合格率が下がっているのは統計的な事実です。

比較対象として適当かどうか疑問ですが、わたし自身経験がある宅地建物取引主任(現 宅地建物取引士=宅建:国家資格)の例を挙げます。わたしは昔、宅建を受験して合格していますが、当時の宅建の合格率を調べたところ、15%ぐらいでした。
こういう巷の国家試験の合格ラインは通常、得点率60~70%に設定されていることが多く、60~70%取れれば合格できます(しかし、それでも合格者は100人中15人しかいませんでした)。
医療職の理学療法士国家試験は、得点率60%が合格ラインです。
 
次に述べるように、医師国家試験は一般問題と臨床問題が例年65%前後がカットオフ値となっていますが、それで合格率が約90%です。
この点が、他の巷にある国家試験と医師国家試験が違う点です
 
 
医師国家試験の合否システム

医師国家試験は、
❶必修問題
❷一般問題
❸臨床問題
の3つに分類されています。必修問題では80%の得点率が合格ラインです。
❶<80%なら、❷と❸の出来がどんなに良くても(満点でも)不合格です。

❷と❸は相対基準で判定されます。つまり、順位が下から〇%以内に入っていると不合格…と下から一定の割合で落とされるものです。❶がどんなに高得点でも(満点でも)、❷❸で下から一定割合内に入っていると不合格になります。
 
以下は2018年(第112回)からの合格基準と出題数です。 
・必修問題100問…80.0%以上の得点率であること
・一般問題100問(2017年までは200問でしたが、2018年から100問に減少)
・臨床問題200問

dr 2018年からの医師国家試験.JPG

一般問題と臨床問題を合算して、相対基準で合否が決められます。
 
dr 医師国家試験1.jpgいえいえ、これ違いますよ。
 
❶は80%の合否ラインと決められていますが、❷❸は相対基準、つまり単純に得点率で決められる基準ラインではなく、下からの順位の%で決められるラインです。尻から切られるものなので、仮にも何も、全員満点でもない限り全員合格はないのです。
 
この、下から「〇%」以内…ですが、具体的な数字は厚労省から発表されていません。恐らく7%以下、-1.5SD以下ぐらいだと思われます(ここを微調整して、合格者数を調整しているものと思われます)。繰り返しますが、❶がクリアできていても(満点でも)、❷❸で順位が下から〇%以内なら不合格です。
得点率では実際のところ、2017年まで❷と❸が分離して採点されていた時代で、だいたい62~70%ぐらいが合格ラインになっていました(相対基準なので、年度により%値は異なる)。概ね65~70%得点できていないとアウトです。
 
その他、❹これを選んだら決定的にダメ…という禁忌選択肢がたまに散らばっていて、それを選んでしまうと禁忌判定され、その禁忌判定が4つ以上あると不合格…という不合格基準もあります。
 
❶❷❸❹全てをクリアして合格です。

選択肢は多くの問題で5つですが、最低5つです。5つの中から1つ選ぶ五者択一もあれば、2つ選ぶ五者択二もあります。
五者択二の場合、2つとも正答できてないと得点になりません。片方が正解していても部分点はありません。よって、勘で答えて得点できる確率は10分の1 しかありません。
 
最近の宅建問題を見ていませんが、わたしが受けた当時の感触では、医師国家試験で言えば、必修問題ぐらいの難易度ではないかと思います。
その出題問題の難易度で、65%から70%得点できていれば合格です。80%も要りません。
しかし、合格者はたったの15%程度しかいないというのが現実。
もし仮に、宅建の合格ラインを得点率80%に設定したとしたら、合格者は多分5%ぐらいしかいないのではないでしょうか。
医師国家試験とはあまりにも違い過ぎます。
 
要求される知識量もはるかに多いです。合格するためには相当な準備が必要です。
そのため、受ける人の勉強量も違い過ぎます。難関の医学部受験を突破し、卒業見込の人(または既卒の人)だけが受験するのが医師国家試験です。宅建を受験した人たちには大変失礼ですが、医師国家試験とは受験者のレベル(学力層)は全く違うと断言できます。
 
宅建ではなく、税理士、公認会計士、弁護士、…など、この辺の難関資格になると、よく知らないのでコメントできませんが、難易度が中等度の、巷の国家試験よりは難しいということ、合格率%だけでは難易度を語れないことを解っていただければと思います。
 
実際のところ、難しいといっても多くの受験者が合格していますから、より正確には、合格するのは大変だ(落ちないようにするのは大変だ)…ということでしょうか。


医師国家試験は難化しています

医師国家試験問題は、2017年までは3日間で500問でした。
2018年からは2日間で400問になりましたが…。

昔、と言っても2000年頃の出題は300問ぐらいでしたし、択二で2つとも正解してないと得点にならないといった方式はありませんでした。マイナー科目(皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、泌尿器科、…等)については、次年度はこれとこれを出題します…という具合に事前告知され、毎年2科目しか出題されてなかったようです。出題されないマイナー科は勉強する必要がなかったのです。
今はもちろん全ての科から出題されます。
昔と比べて、受験生の負担は、明らかに増えています

乳腺外科の先生は、乳腺なんて5~6問しか出ません、捨てても大丈夫ですから、内科をしっかり勉強して下さい…と言われますが、1%は出ているということですね。
少ししか出ないと言っても、そんな科目がたくさん寄せ集まっていますから、範囲が非常に広いのです。
 
比較的易しい問題もありますし、難問もあります。問題により難易度にかなり差があります。易しい問題を全て落とさずに拾っていけば、多分合格できるであろうと考えられています。
 
注:具体的な問題例は医師国家試験ってどんな問題が出るの?をご参照下さい
 
しかしながら、大学病院の各専門科の先生方は、「最近の医師国家試験は、昔と比べて出題される問題が間違いなく難しくなっている」 と言われます。

医師国家試験に出題ガイドラインはもちろんありますが、これは学生に出す問題じゃないだろう…といった専門的過ぎる問題もたまに出されています。特に、治療法については、専門医でも判断が難しい問題も出されています。
 
*難しい問題の例
110 I 12.PNG
*2016年(第110回) I ブロック12
*某医師国家試験予備校の集計による受験者の正答率…約15%
厚労省発表の正解…d
*大半の受験生(約80%)が e を選択。
 (当方とは無関係です。医学生向けには大変参考になります)
*ある消化器内科の先生のコメント:
 「我々にとっては常識だけど、いやらしい問題だね」 と。
 
学生に出すレベルの問題じゃないだろ…という問題は、どうせ多くの学生が正解できません。だから、できてなくても合否にあまり関係ないです。
しかし、翌年受ける1学年下の医学生たちは、その “過去問” への対策をします。そして、類題が出題されると、その「学生に出すレベルの問題じゃないだろ」 的な問題の正答率はほぼ間違いなく上昇しています。みなさん過去問を勉強しますから。

この業界では、みんなができる正答率の高い問題は正答できる必要があるが、みんなができてない問題は解けなくても大丈夫(マニアックな問題はできなくても合否に影響しないから捨ててもいい)…という認識があります。みんなと同じことをしていれば受かるが、みんなと違うことをしていると落ちる可能性が高くなる…ということ。
「学生に出す問題じゃないだろ」 的な問題であっても、他の多くの学生たちが対策を講じているなら、自分も対策しないわけにはいきません。
そうなると、勉強する内容がどんどん難しいものになってしまうわけですね。このような構図で内容が年々どんどんインフレ化しているため、対策がとても大変なのです。
 
さて、ここまで一生懸命、難しいですよ…と熱弁しているみたいで、書いていて苦々しいのですが、確かに受験者の90%が受かる試験です。
しかし、非医療関係者の方々はくれぐれも、医師国家試験は簡単だ…などという合格経験者(医師)の言葉を信じてはいけませんよ。猛勉強して、受かってから振り返って、簡単だったと武勇伝のごとく言っているのですから。

それを真に受けて、医師ではない人が簡単だと言い放つのは論外です。
 
合格するのが大変なのは絶対に間違いありません。
dr 医師国家試験は簡単か?.PNG
注:2016年のデータを基に書いています
 
 
 
全メニュー:下の「月間アーカイブ2019(22)」をクリックしてご覧下さい。